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理髪師の冒険


潜在意識

11-1

畳の一箇所が丸く盛り上がった。
竹の子でも生えてくるのだろうか。
裏の竹は相変わらずこじんまりとしていた。

11-2

二つ目の盛り上がりが出来ていた。
一つ目の盛り上がりには変化が無い。

一つ目の盛り上がりを手でそっと押してみた。
中は空洞のようだった。
二つ目の盛り上がりも押してみた。
こちらも空洞のようだった。
もぐらだろうか。

11-3

畳の端の方に三つ目の盛り上がりが出来た。
むくむくと動いている。
竹の子ではなさそうだ。
やはりもぐらだろうか。
まさか蛇だろうか。
それとももっと怖ろしい何かだろうか。

むくむくと動いて畳の端が持ち上がり,
灰色の短い毛に包まれた丸い背中が見えた。

どうか得体の知れないものではありませんように。
脳裏には地面から出てくる可能性がある生き物がほんの瞬時にあれこれと浮かんだ。
もぐらでありますようにもぐらでありますようにもぐらが一番ましだ。

卵の殻を持ち上げる雛のように力を振り絞っている。

そして頭を持ち上げて,小さな身体が現れた。
子犬だ。

急いで慎重に畳の中からそっと持ち上げた。
なんでこんなところになんでこんなところになんでこんなところに。

おなかが丸々としているからお乳はちゃんと飲んでいたようだ。
でもどこでどのように。
親はどこに。
それはわからない。
とにかく助けなければ。
抱き上げるとやわらかであたたかなおなかの感触がした。
犬だ,間違いなく犬だ。

細かいことは今はいい。
後にしよう。

すぐに次のミルクが必要になる。
まずは寝床を用意してあげなければ。
私は階下へ急いだ。

[完]


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