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理髪師の冒険


恐怖の恐竜洞窟

15-1

薄茶色のシャツの下に鎧を着けているのがわかる。
鎧の上に一枚はおっているという表現の方が近いかもしれない。
遠目には武装していないように見えるが,決して無用心な訳ではなかったのだ。

頭には茶色い被り物。
丈夫な柔軟性もある素材のようで,耳も覆われている。
普段はそうしていないがある程度は顔を覆うこともできるようだ。

鎧は胸当てで,頭の帽子もこの鎧も厚みのある皮のような物に見える。
胸当ての下には濃い茶色のアンダーウェアを着けていて,
両腕には帽子と同じような材質の茶色い肘当てを着けている。
はおっているシャツの袖が短いので肘当ては隠れておらず,
アンダーウェアの袖の上にはめてある。

胸当ての部分が黒に近い灰色の影に見えるが,
シャツの色が重なるせいかやや茶色がかっても見える。
はめている手袋も厚手の茶色だ。
アンダーウェアの袖は手袋の中まで続いている。

はおっているシャツの少し丈の長い部分を腰のベルトでおさえてまとめ,
その下にはシャツと似た質のズボンを着用している。
アンダーウェアとズボンの間にはやはり防具を着けているようだ。
そのせいでだぶついたシルエットに見えるのだろう。

彼は目の前で膝を曲げてそこに膝当てがあることを誇らしげに示した。
もちろん膝当てを自慢したのではない。

彼はぽんと『舞台』の上に跳び上がった。

履物の質や構造は遠目に見ただけではよくわからない。
足に馴染む柔らかさがあるようだが,
厚みのある底は着地の衝撃をわりと吸収しているように見える。
おそらく外側には衝撃を跳ね返す堅さが,内側には衝撃を吸収する弾力があるのだろう。
短い靴に見えるが別のパーツが服の中にも隠れているかもしれない。
そうやって,服の中にはいったいどんな万全な装備があるのであろうかと見る者に想像させた。

この丈夫そうな履物も,腰の太めのベルトも,ベルト周りの小道具も,身体にくくりつけている鞄も,
ついでに帽子からはみ出ている髪も,茶色い。

彼は砂漠だ。

15-2

未使用曲が流れている。
おどろおどろしくも美しい旋律である。
この曲があのダンジョンで流れたら……と想像する。
素晴らしい雰囲気になったことだろう。
CDを聴いて,当時のコンピューターゲームの限界を懐かしく思う。
今初めて気付いたような感覚だ。
このCDは前から持っていたはずなのだが。
あまり聴いていなかったのだろうか。
昔の自分はCDをじっくりとは聴かなかったのかもしれない,
ブックレットも見ているようで見ていなかったのかもしれない,
それとも本当に,今初めてこれを『見つけた』のだろうか。

えがかれた彼の姿はだいぶ違う。
服の色は鮮やかになりワンポイントのアクセサリーもデザインされている。
砂漠が草原になったかのようだ。

絵からにじみ出る人柄にひとつふたつの共通点は見つけられそうだが,
あのごちゃごちゃとした彼のなりと人格は表現されていない。

「とてつもなく強い恐竜が出ることがあるんだよね。」
「出会わないことを祈るけど,出るのはまれで,出会わないままクリアすることもある。」
「出ないと物足りない気もする。(笑)」

ありがちなコメントが脳内にリピートした。

15-3

進む先にあるのは我々が『恐怖の恐竜洞窟』と呼ぶ場所だろうか。
それはわからない。

別の世界でどう表現されようが,
彼の日々はここにある。
未使用曲も,未使用曲ではない。
没案など存在しない。
全てが使われている。

彼は『舞台』の上を踊るように跳ねて進んだ。
なめているように見えるが,
あの動きは計算済みなのか,それとも運がいいだけなのか。

未使用にされようが変更されようが,
真実は目の前にある。

[完]


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