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理髪師の冒険


天も地もなく

16-1

空を飛ぶ。
気持ち良く飛ぶ。

色々な方向へ。
色々な高さへ。

鳥のように旋回し,
身体をひるがえし,
縦横無尽にぐるんと回る。

白い雲が青空の下へ,
山と地上が頭の上へ,
あてもなく。

自由に。

16-2

けれども私は同じ辺りをぐるぐると廻っていた。
ふと地上を見たら,お皿に乗せた巻き寿司が家の前に置いてあった。

その中の一本をかじってみると,おいしかった。
光に包まれた。

車が一台やってきた。
私は高い所に戻って車の中を見た。
家族が乗っていた。

車から降りた家族がのり巻きを見た。
のリ巻きは私がかじる前の姿をしていた。

16-3

あの光を見ただろうか。
車の中からあの光を見たのだろうか。

私が空にいると,
家族は穏やかな愛に包まれている。

別れはいっときの苦しみとより多くの平穏をもたらす。
この暖かな愛の光を,
地上にいてはもたらすことができない。

地上では愛の光が氷の刃となる。

惑星と衛星のように,
或いは地球と太陽のように。

[完]


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