<indexへ抜けます>  前のページ  次のページ

理髪師の冒険


郵便

17-1

家族宛の郵便物が置いてあった。
開封せずに捨てるようなので,見てもかまわないかを確認すると,かまわないと言った。
サイズは定型最大で,中には三つ折にされた印刷物がたっぷりと入っていた。

手書きの便箋も一枚入っていた。
その内容から,この差出人は,知り合いなら誰彼構わず勧誘をしているようだった。
どんな勧誘なのかと一枚ずつ眺めてみた。

一枚,一枚,一枚…。
どんどんめくっていった。
最初は自己啓発関連を臭わせるパンフレットが続いたが,
めくるごとに様相が変わってきた。
というのも,封筒の中身は二種類あって,勧誘関連のパンフレットの他に,
差出人の個人的なお気に入りを紹介する内容が同封されていた。

17-2

不特定多数の人に自分が編集したものを送りつける喜びを,
私も多少は理解できるが,これはいきすぎというものだろう。
なにしろ送る相手を間違っている。
いくら大勢に送りたくても,相手は選ぶべきだろう。
そんな風に,あきれながらめくるペースを上げていった。

ふと,目を疑った。
それまでとは毛色の違う作品が紹介されていた。
差出人はその作者を「ことに持ち上げて」いた。
いつの頃からか見かけなくなったことを惜しみながら,
隠れた掘り出し物という位置づけで紹介していた。

「ことに持ち上げて」…いるように見えたのは,主観かもしれなかった。
あくまで他の作者と同列に並べられていたのかもしれない。
あきれながらぱっぱっとめくっているように見えるペースを保とうとしたが,
足は動揺を隠すように家族から離れた場所へ移動した。
たまらずじっくりと見た。

覚えていない。
記憶にない。
かつてこれを書いたのだろうか。

それとも,そっくりさんだろうか。

[完]


indexへ抜けます> <その他のよみもの理髪師の冒険

inserted by FC2 system