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理髪師の冒険


夕焼け

28-1

あの子が中へ入ってしまった。
行ってはいけない,殺されてしまう。

追いかけて中へ入った私はあの子を抱えて脱出する姿を思い描いた。

ビルの中を探し回るうちに,突然,昔の家に移った。
部屋は橙色に染められ,よしず越しに赤い空と遠くの山々が見えた。
テレビからは特殊な人々についての話題が聞こえてきた。
笑顔で親しみやすいデザインのスーツなのだが,どこか別の世界の人々のように感じられる人々で,その原因として様々な説が面白おかしく語られていた。

外に出て来るのは入っていった者達である。
私は人だかりに紛れて入口を伺い,これを確信した。
その時,あの子が駆け込んで行ってしまった。

部屋を出ようとした私は元のビルのオフィスのような場所に現れた。
ジャケットの男性達がわらわらと現れて私の邪魔をした。

あの子はもう連れて行かれてしまったかもしれない。
もしそうだとしても,どんなところへ連れて行かれたのかを突き止めたい。
背後にいる何かを確認したい。

壁に大きな鏡を見つけた。
鏡には,スーツの男が数人と,その部下と呼べそうな小柄な女性が映っていた。
女性はうろたえた。
取締役の男性たちがやってきて,彼女を取り囲んだ。

灰色の大きなホールまで連れだされた。
すると背後から大柄の男性が私の肩を引き寄せて,その輪から連れだした。
また次の役目の者に引き渡されただけなのだろうと思ったが,男性は出口へ向かっていた。
こんなことをしてこの人は大丈夫なのだろうか。
私は心配になった。
だが,男性は堂々としていた。
不思議だった。

あの子だ。

よくあなたを抱えたものだった。
今はあなたに抱えられている。

[完]


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